挨拶

地域共同テクノセンター長 小林敏郎

地域共同テクノセンター長

電気電子システム系 教授 小林敏郎

アベノミクスの第1ステージ「金融緩和・財政政策・成長戦略」,第2ステージ「強い経済・子育て支援・社会保障」により「一億総活躍社会」が生み出されようとしています。これらに引き続き,第3の矢である成長戦略に関しては,「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の実現を目指した「未来投資戦略2017」が閣議決定されました。「未来投資戦略2017」とは,革新的技術を活かして新たな需要の創出と生産性革命をもたらすとともに,一人一人のニーズに合わせたサービス提供によって社会課題の解決を目指す戦略で,具体的には,医療・介護や自動走行といった「戦略分野」とイノベーションの成果を大胆に実証する規制の「サンドボックス」など「横割課題」への対応の両面から,世界に先駆けた取り組みが進められる予定です。

津山市でも,全国の自治体に先駆けて平成27年に「農林業」,「ものづくり」,「観光」,「再生可能エネルギー」の4つの分野を柱とする「津山市成長戦略」が策定されるとともに,「産業支援センター」が立ち上げられ,ビジネスの創出による雇用促進,技術者教育による競争力の強化などの未来への投資が進められています。

このような社会の躍動的な動きに対応し,津山高専においても平成28年度から従来の4専門学科から大括りの「総合理工学科」の1学科に組織変更し,基礎教育の強化,生物・化学などの新しい専門分野の拡充,工学教育の高度化,分野横断・融合教育の推進など,新しい教育・研究体制となりました。

ご存知のとおり,津山高専の地域共同テクノセンターの目的は,「教育及び研究機能を地域社会に開放し,教育及び研究の発展に寄与するとともに,地域社会における産業技術の振興及び発展に貢献すること」であると規定されており,地域の戦略的な取り組みを支援するため,シーズの提供,ニーズへの対応(課題解決)と,設備・システムを活用した技術者教育に向けて,従来から産学官金民の連携・融合の取り組みを進めています。

さらに,平成28年10月には津山高専内に「つやまイノベーションセンター」を設置しました。「つやまイノベーションセンター」は,津山高専の高い研究開発力を活かし企業の技術開発や製品開発支援を強化するために,つやま産業支援センター,人形峠環境技術センター,地元企業,津山高専が力を合わせる産学官連携の研究・開発拠点です。企業対応の専任コーディネーターを配置するとともに,津山高専の研究者,企業技術者から構成される研究会が組織されました。研究会は,ステンレス・メタルクラスター企業と連携して新素材や次世代インフラ関連技術開発を行う「メタル研究会」,農業・医療・福祉介護ロボット研究の推進・実用化,生産性向上を推進する「ロボット研究会」,3Dプリンターの活用,企業IT化を支援する「IT研究会」の3つが発足しています。

経産省だけでなく,文科省も教育・研究機関の在り方について検討しており,興味深い調査報告をしています。すなわち,産学連携,オープンイノベーションで世界をリードする米国に対し,日本は製品開発,応用研究についての産学連携は同程度にまで追いついたが,将来の製品開発につながる基礎研究については,まだまだ米国より遅れているとのことです。これは,日本では短期的・長期的なロードマップを作成して,マイルストーンを明確にした事業の進め方が実質化されていないということであろうと思います。このような長期的な課題が解決できなければ常に二番煎じとなってしまいますので,イノベーションにつながるための研究・事業戦略が重要となります。

以上のように,企業の皆様方には,高専の設備,人材,ネットワークを活用して頂くと同時に,将来地域を支える学生の教育と津山高専の持続的な発展に関して,今後とも引き続きご指導,ご協力頂けますようお願い申しあげます。